【漫画家志望者向け】持ち込みでの「完成原稿のみ」と「ネームも可」の違いとは?
質問箱:持ち込みの条件の違いとは?
※質問箱に寄せられた質問を、別途アーカイブしておきます。また随時、加筆修正を加えていきます。
想像力を働かせてみる
それぞれの編集部、あるいは編集者によって方針があるので、一概には言えませんが。あくまでも一般論として、受け取ってください。
例えば、毎月100本を超える投稿作があり、持ち込みもひっきりなしの人気編集部が、ネームでも可にしたら、どうなるでしょうか? 更に多くの持ち込みが増えて、仕事ができなくなるでしょうね。逆に、持ち込みが少ない編集部は、完成原稿のみ持ち込み可より、ネームでも可にしたほうが増えるでしょう。
もちろん、人気雑誌で仕事は忙しいが、少しでも投稿者の才能を拾い上げたくて、個人的にネームでも可とする編集者も、いるでしょう。完成原稿よりも、ネーム段階のほうが修正も楽ですから。これは、作家目線で考えてくれている編集者ですから、大切にしたいです。
人間の心を扱う作業?
このように、「なぜネーム可と不可の編集部があるのだろう?」と疑問を持ったとき、すぐに答えを求める前に
- 自分で考え
- 仮説を立て
- 検証してみる
こういう癖をつけるのは、創作においても大事です。また相手の意図を推測する能力って、作品作りでは大事な部分なのです。
なぜなら物語とは畢竟、人間の心を扱う作業なんですから。
『美味しんぼ』の海原雄山も、繰り返し言っていますね、「人間の心を感動させるのは、人間の心だけだ」と。素材自慢・技術自慢に陥りがちな山岡士郎との差は、正にそこです。そしてこれは、雁屋哲先生が自分の人生の中で得た人間観・人生観でもあるのでしょう。哲学と呼んでも良いかもしれません。
プラスアフファを用意
「完成原稿のみ」という編集部ならその意図を汲み、「ネームも可」という編集部ならその意図を汲む。それもまた、作話の訓練でしょう。まずは予習として推測し、自分の推測がなぜズレたかを、検証することで、一粒で二度も三度も、思索の訓練になるのですから。
さらにそこから一歩踏み込んで。「例えネーム可の編集部でも、ペン入れしたキャラクター表を付けたほうが、編集者も具体的なイメージが持ちやすいだろうな」と考えて、主要キャラの全身ポーズや表情集をペン入れした形で用意するのもまた、作家側の心配りでしょうね。
また、完成原稿のみの編集部でも、もし自分の作品に興味を持ってもらえたときのために、別作品のネームを用意しておくのも無駄な行為ではありません。ネーム不可だから持っていかないではなく、そういうわずかの可能性にも備えておくのは、チャンスを掴む人に共通しています。
プロたる心構えと準備
昔担当した漫画家さんは、新人時代には常に3種類の完成原稿を用意し、ベテランの先生が原稿を落としたり減ページになったときのために、用意していたそうです。しかも、ページ数を28・32・36ページと3種類。さらに、これらの作品は2ページの増減に対応できるよう、構成も考えていたと。
つまり、26・28・30・32・34・36・38ページのどのページ数で雑誌に穴が空いても、対応できるようにしていたということです。まさにプロフェッショナルです。掲載されるかどうかもわからない原稿を3本も完成させるなんてと思うかもしれませんが。「原稿を書くこと自体が、自分の練習でもあるから」と、その作家さん。
「自分の技術アップになるし、うまくすれば掲載されて原稿料にもなる。やらないほうがおかしくない?」とも。質問者の意図からは、少しズレましたが、こういう心構えって、とてもとても大事ですよね? 参考になれば幸いです。
https://mond.how/ja/manzemi_bot
この質問箱では、もう一歩踏み込んだ回答を心がけていますので、質問をお待ちしています。
※本記事はMANZEMI講師のnote記事を承諾を得て転載したものです。