第14回:出版社へ持ち込みの前に

第14回:出版社へ持ち込みの前に

■持ち込みと投稿の違い■

「持ち込みと投稿と、どちらが良いですか?」と、よく聞かれます。出版社の90%が集中する東京へは、地方在住者は簡単には行けません。ですが、持ち込みのほうがメリットがたくさんあります。

投稿では数多くの投稿作の中で、群を抜いた面白さや個性がないと、なかなか担当が付くことはないですが、持ち込みで作品だけからは解らない才能や感性を認められて、担当についてもらえたというプロは多いです。

対面で得られる情報は意外に多いです。

技術は稚拙だが、素直で好感の持てる性格だったのでアシスタント先でもトラブルを起こすことがなさそうだと思われて、ベテラン作家のアシスタントを紹介された結果、意外な才能を見出されたなんてことも。

編集の側の微妙なニュアンスのアドバイスも、会って話すとすんなり理解できたりと、例え短い時間であっても、直接編集者と会うことで、得られる情報って多いと思います。持ち込み推奨する理由です。

 

■持ち込み先は多様化■

今は、日本各地で出張編集部も数多く開催されており、昔に比べて持ち込みのハードルもずいぶん低くなりました。大阪や名古屋はもちろん、北海道や福岡でも出張編集部は開催されますから、ありがたいです。

とはいえ、中学生や高校生では鹿児島から福岡へ出掛けるだけでも大変です。鹿児島から福岡なら新幹線も通っていますが、宮崎からだと乗り継ぎが必須だったり、離島の人間は東京都民でも大移動です。

東京港から父島まで船で24時間ですから。

持ち込み推奨ではありますが、投稿は無意味とか、そんな極論は言っていません。それぞれが自分の状態や、経済状況に合わせて、最善の方法を選択すれば良いでしょう。そういう賢明さもまた、作家に必要な資質です。

とはいえ、東京都内や関東一都六県の在住者が有利なのは事実ですし、それ以外でも新幹線の最寄り駅がある地域は有利。ぷらっとコダマとか、時間はかかっても比較的安価な移動手段も、ネットで検索すればわかる時代です。

 

■持ち込む前に確認■

では、持ち込み時に気をつけることは何でしょうか? まず、多くの出版社は土日は休日の完全週休二日制が多いので、土日の持ち込みは難しいです。学生とか、平日の持ち込みが難しい人は夏休みなどを利用しましょう。

また、月刊誌だと発売日の1週間前から2週間前は、製作作業で忙しいことが多いので、避けたほうが無難でしょう。逆に、週刊誌は常に忙しいので、そこらへんの配慮はあまり考えなくても良いでしょう。

忙しい時期に運悪く当たると、デメリットがあります。

約束していた編集者が急用で不在とか、約束の時間の半分で切り上げられたとか、よくある話です。不在の場合は代わりの編集者が見てくれることも多いですが、コレも絶対ではありません。

ただし、そうやって代打で出てきた編集者と意気投合して、そのまま担当となってもらって、デビューまでたどり着いた教え子や受講生もいますから、持ち込みはある種の運試しという側面もあります。

 

■持ち込みは運試し■

この、運試しというのは重要です。よほど並外れた実力がない限りは、担当編集者との良き出会いが、作家の未来を決める部分があるのも事実です。でも、相性なんて実際に会って話してみないと、わかりません。

また、出会いのチャンスは多く作るべきです。複数の出版社を回るのも有効ですし、同じ出版社内の他の編集部を回るのも、効率的でしょう。なんなら、持ち込んだ先の編集者に他の編集部を紹介してもらいましょう。

もしそこで、紹介を渋られたら?

あなたに才能があって他の編集部に紹介するのが惜しいか、他の編集部の人間に紹介して「あんな才能のない持ち込み、こっちに押し付けるな」と、文句を言われているのを恐れているか、どちらかでしょう。

会社を出て、ちょっと喫茶店で詳しい話を聞きましょうかと言うか事務的な対処かで、あなたの才能に対する評価も、推測できるでしょう。そういう意味では、持ち込みは残酷な現実も見せつけます。

 

■持ち込みで挫けるな■

今では巨匠となった作家でも、初めての持ち込みのときにボロクソに叩かれて、悔しい思いをした経験を語ることも多いです。編集者と言っても、見る目がある編集者は少数派で、5人に一人と思っておきましょう。

逆に言えば、良い編集者に会うには、5人以上と会って、出会いの確率を高める必要があります。個人的に尊敬する、どおくまん先生のインタビュー記事を、以下にリンクします。投稿者必読です。

どおくまんインタビュー[前編]「プロには絶対負ける気がしない、って思ってた
https://magazine.manba.co.jp/2017/05/22/special-dookuman-interview01/

X編集部がどこか、業界人はだいたい予想ができますが、ここまで酷い編集者は、そんなにいません(ゼロとは言いません。実際、最近も受講生が酷い対応をされた愚痴を、続けざまに聞きましたし)。

また、大手の編集者に名刺をもらって、それで舞い上がってその担当にだけネームを送り続け、気がつくと三十路になって、作家を諦めたなんて投稿者も知っています。少年老い易く学成り難し、です。

 

■持ち込みの電話で確認■

持ち込む編集部を決めたら、自分の大まかなスケジュールを仮決めして、雑誌に掲載されている持ち込みの際の注意書きをよく読み、早すぎず遅すぎずの適切な時間に電話をして、持ち込みの予約をしましょう。

作家は夜型が多く、編集者もそれに合わせて活動してるので、電話をするなら午後2時ぐらいが適切でしょう。午後出社の編集者や、昼食に出ていた編集者も、この時間になら編集部にいる可能性が高いですから。

申し込みの電話では、ハキハキとゆっくり、簡潔に要件を述べましょう。

「○○県在住の✕✕と申します。○月○日に持ち込みをしたいのですが、可能でしょうか?」といった感じで大丈夫です。遠距離からの持ち込みだと判っていれば、持ち込み時間を言えば合わせてくれることが多いです。

担当者の名前と、時間は必ず復唱して、確認すること。受付で担当者を呼び出してもらうことが多いので、忘れると確認に手間取ります。また、14時と言われたのに4時と勘違いしたとか、よくある話です。